Music: Patient Number 9 / Ozzy Osbourne(2022)

 

 

ジーがソロでも成功した理由はそのキャラに負うところは大きいと思いますし、マネージャーなど周りの人の助けも大きかったと思います。それなら音楽的に、魅力がないのかと言われると、そうではないと思います。

ブラック・サバス脱退後も、ソロ活動をする訳ですが、今でも「元ブラック・サバスの」と枕詞がついています。ソロのキャリアの方が長いのにです。

しかし、その意味は、ブラック・サバス時代の音の特徴をいい意味で失っていないとも言えます。どこか、英国や欧州的な中世ぽい憂いに満ちた雰囲気が漂っています。ハリー・ポッターに出てきそうなキャラと風貌ですし、音作りもそうです。

「Diabolus in musica (devil in music)(悪魔の音)」と呼ばれる和音(コード)があります。その音は”音楽に潜む悪魔”と称されます。全三度、すなわち減5度(増四度)を含む三和音で構成されます。ブラック・サバス時代に、ギタリストのトニー・アイオミが多用したトライトーンです。バンド全体としてもオジーのヴォーカルを乗ると、不穏な和音感になってしまいます。やがて、このトライトーンは、ヘヴィメタルにおける定番テクニックとして定着していきました。Judas PriestMetallica、Slayer、Marilyn MansonSlipknot等、その後数十年間で登場した多くのバンドが、曲にダークなパワーをもたらすこの悪魔のインターバルを活用してきました。このテクニックへのオマージュとして、Slayerは1998年発表のアルバムを『Diabolus in Mu-sica』と名付けているほどです。

オジー・オズボーンが、グランジブームで潰れなかったのは、こういった要素を捨てなかった体と思います。能天気な音楽が受けない時代って定期的に巡ってくる訳ですが、時代の風潮や流行に取り残される(淘汰される)ミュージシャンも多い中、オジーは、やっぱり鉄板です。