死体は語る / 上野正彦(2001)

死体は語る (文春文庫)


★この手の本ばかり読んでいると、なにか不謹慎に思われそうですが、シャーロック・ホームズの小説をより深く理解するためには背景知識も必要かと思い、いろいろ目を通しています。


検視、検死というのは、典型的な帰納法(個々の具体的な事例から一般に通用するような原理・法則などを導き出すこと)でしょう。ホームズも100年前で高度な技術はいまよりは少なかったとは言え、持っている情報量は半端ない量であるように描かれています。「死体は語る」というのは、観察眼に優れた人にとっては、そうなのかもしれません。


また、あの小説を面白くさせているには、ホームズの推理が技術的に優れているからだけではないように思います。背景にある人間ドラマの部分も魅力的なんだと思います。愛、嫉妬、名誉、金銭欲といった人間の感情が複雑に絡み合った結果の殺人であり、それを紐解いて行くところにも魅力があるように思います。