Music:  A POINT BETWEEN / FLOATING SPECTRUM(2019)

 
 
 
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TRACK LISTING
1. The early green outburst
2. Rising tide, nourished soil
3. Inner island
4. Falling apart on the dreary field
5. Obscured moon
6. Eruption
7. Descent to the hadal zone

 

フローティング・スペクトラム(Floating Spectrum)は、台湾出身でベルリンに活動拠点をおく作曲家兼音響技術者であるメイ・ファン・リアウ(Mei-Fang Liau)のプロジェクト名である。フローティング・スペクトラム名義のデビューアルバム『A Point Between』は、シンセサイザーの音、日常の環境音、そして自前のシンセサイザー・ソフトの合成音を組み合わせることにより創作されたのだが、まさに他に類をみない音像の世界を提示する。このアルバムを完成させるために、Liauは自作の「ポリフィラPolyphylla」と呼ぶフラクタル・インスパイア・ソフトウェア・シンセサイザーを主軸に活用した。このソフトは、自然界の動植物が非常に複雑で有機的な形態を作り出す方法、すなわち、単純な図形を基準とし、そこから微妙に異なる形状の部位を繰り返し生成することで美的に統制の取れた形態を作り出す手順をシミュレート(模倣)するものである。Liauは複雑なダイナミクスを備えたテクステャとサウンドを発展させ、アルバム全体へ影響を与えた。唯一の外れ値は「Eruption」であり、Liauは視覚データを音データに変換する生成サウンド・システムを構築した。このハイブリッド・システムでは、敏感に変動するアナログ信号、高感度のデータ分析、および人間の直感が、一個体の有機体として動作する。もちろん、フローティング・スペクトラムの高度な技術は独特の印象を与える。しかし、アルバム『A Point Between』の特筆すべき点は、抽象的な音の有機体を集めて、豊かな質感かつ一点に集中した芸術作品としてまとめあげたその特殊な能力である。感情的で構造的な深みのある神秘的な作品『A Point Between』を支えるのは、その深みのある反響音である。(Temporary Residence