Music: Seventh Son of a Seventh Son / Iron Maiden(1988)

 

Seventh Son of a Seventh Son

Seventh Son of a Seventh Son

  • アーティスト:Iron Maiden
  • 発売日: 1998/08/19
  • メディア: CD
 

 

アイアン・メイデン(Iron Maiden)の7枚目のスタジオアルバム「Seventh Son of A Seventh Son(邦題:第七の予言)」は、1988年に発表されました。前作「Somewhere in Time」は、映画「ブレードランナー」にインスパイアされた内容で、ジャケット・アートからもわかるように近未来を描いた内容の歌詞や音作りが特徴です。SFチックな前作に対して、本作は、世界の終末を思わせるような超常現象や超能力を持つ人間をモチーフにした曲が多く、オカルトチックな雰囲気のあるアルバムです。アメリカで受けが良かった前作に対して、本作はヨーロッパで受けが良かったことも、それぞれの特徴を暗に示しているように思います。

本作は、捨て曲なしの名盤としてファンの間でもいまだに人気の高いアルバムで、ライブのセットリストにも必ず入る曲が目白押しです。本作を、コンセプトアルバム(一つのテーマに基づいて製作されたアルバム)としてみるファンも少なくない一方で、バンド側の意見は一致しておらず、特にブルース・ディッキンソン(Vo)は、「生と死」、「善と悪」、「天国と地獄」といったテーマを扱ったメイデンらしいアルバムではあったが、アルバムに通底するストーリーはないとコメントしています。バンドリーダーのスティーヴ・ハリス(Ba)としては、主導権を握ってもっと練りこみたかったのかもしれません。実は、制作秘話として、前作の制作時にはブルースの参加が少ない状態で進められたらしく、主導権はハリスにあったと考えられるのですが、本作はディッキンソンがアイディアを膨らませる段階でハリスと密にやり取りを行うようになり、前作から作曲の才能が開花したエイドリアン・スミス(Gt)や、曲作りが多くはないデイヴ・マーレイ(Gt)も積極的に参加し、バンドが一丸となって曲作りを行った様子が後に語られています。メンバーのぶつかり合いが一種の化学反応となり、素晴らしいものに仕上がったのも事実です。また前作はギターシンセサイザーの音を導入したことで古くからのファンの間で物議を醸しだし、離れたファンもいたようですが、本作ではシンセの音は入っているものの、メンバーが簡易なキーボードで音を打ち込む程度に留めたので、前作のように全面にシンセの音が出ていません。アイアン・メイデンの作品を振り返ると、ハリスが主体となりすぎると、プログレス好きの彼の嗜好から、長編(時に冗長)の曲が増え、ダークな曲になり、キャッチーさが失われる嫌いもあります。

 

以下各曲の説明です。

 

Moonchild

イントロのアコースティック部分の歌詞はディッキンソンにより書かれた。Aleister Crowleyの同タイトル小説にインスパイアされたとも言われる。

 

Infinite Dreams

悪夢に苛まれ、不眠症に陥った主人公の苦悶を描いた曲。ハリスによって書かれた。ハリスによれば、本曲は自分のことを投影したとも。自身も新作制作は、悪夢をよく見る。アイディアを過剰に取り込むため、マインドへの負荷が大きくなり、眠れなくなる。永遠と続く夢とは、まさにこの状態だ」と語る。メロディアスな曲調で始まるが、後半はアグレッシヴに盛り上がる。以前には、Still Lifeで、以降はNo Prayer for the DyingやAfraid to Shoot Strangersでも踏襲される。ハリスのお得意の曲展開のパターンであるが、

 

Can I Play with Madness

スミスが持ち寄った曲。当初、'On the Wings of Eagles'というタイトルでバラード調であったが、ディッキンソンがAメロを持ち寄り、タイトル変更を提案した。ハリスが、中間部とインスト部を追加したが、3人の意見が一致せず、大ゲンカとなったとも。

 

The Evil That Men Do

タイトルは、シャイクスピアの「ジュリウス・シーザー(Julius Caesar.. Ⅲ.ii. 81-82)」のくだりから引用された。「The evil that men do lives after them, The good is oft interred with their bones. (人が行う悪は人の死後も生き続ける。善は人の骨とともにしばしば埋葬される)」しかし、曲の内容には関連性はない。アイアンメイデンの場合、タイトル曲は、ハリスが観た映画からそのまま引用されるものの、その歌詞の内容は、映画の内容とは関係ないというのが鉄則のようです。

 

Seventh Son of a Seventh Son

本作中2番目に書かれた曲。未来を予見する能力(Clairvoyant/千里眼)を身に着けた男が、本曲の歌詞の主人公になっている。ハリス節が炸裂します。メタルとプログレが見事に融合しています。

 

The Prophecy

マーレイとハリスによって書かれた曲。「預言者」。歌詞の内容から、主人公は自分に特殊な能力が備わったことを受け入れ、悟りの境地に達したと思われる。

 

The Clairvoyant

本作中一番初めに書かれた曲。スチィーヴがイギリスの霊能者ドリス・ストークスが亡くなったニュースを聞いたことが曲作りに影響している。「もし未来予知能力がある人がいるとすれば、自分の死期についても予想できるのだろうか」という哲学的な命題を下地に曲の歌詞が書かれた。曲の前半では、一人称で語られており、後半は3人称の視点で語られている。イントロのベースのフレーズが印象的。本曲がアルバム全体のモチーフとなり、次にタイトル曲「Seventh Son〜」に着手する。

 

Only the Good Die Young

アルバムのイントロと同じパートがアウトロでも流れる。このイントロとアウトロが、本アルバムが何かコンセプトがあることを匂わせる一要因になっている。本曲は、後にTVドラマ「マイアミ・ヴァイス」の"Line of Fire"でも使用された。

 


Moonchild (2015 Remaster)