Study: How the Moon's 'Wobble' Affects the Tides and Flooding Here on Earth. New York Times. Intl. August 1, 2021

タイトルは、「いかにして月の”振動”は、地球上の潮汐と洪水に影響を与えるのか」。

・満潮は、多くの場合、自転する地球に対して月の引力が作用することで起こる。通常、海岸では1日(24時間)に2回の満潮が確認できる。月は約1ヶ月で地球を一周し(公転)、月の地軸は僅かに傾斜している。
・そのため、月の公転軌道は、交点周期(nodal cycle)とも言われ、月の公転軌道の地球の赤道面に対する傾斜角は、平均で 23.4 度であるが、18.6年の周期で5度の振れ幅を持って振動して(ゆらいで)いる。
・気候変動に関連した満潮時の洪水は、この先の10年間で記録的な被害をもたらす頻度が高くなることが予想される。気象予測に際し、天気図、天文学的な事象、各地の地形による潮汐の特徴といった誤差をもたらすデータ(ノイズ・データ)を正確に考慮あるいは除外することが求められる。
・他のノイズデータを考慮しないなら、月のゆらぎの影響により、満潮の海水面レベルが3〜5 cm上昇する期間があることが予想される。それ単独では、わずかな上昇であるが、気候変動の影響による海水面の上昇と相まって、2030年代の半ばには、沿岸地域ではわずかな気象の変化も、洪水を引き起こしやすくなり、結果的に災害の頻度が高くなることが予想されている。

 

キーワード
Moon wobble 月のゆらぎ(振動)
1728年に発見された月の軌道変化のことで、18.6年の周期で傾きを変えて地球の周りを公転するというもの。その18.6年のうち、半分では潮の満ち引きが弱まるが、残りの半分では満ち引きが激しくなり、満潮時には通常の満潮時よりもずっと海面が高くなる。(Yahoo

 

Moon's nodal cycle 月の交点周期(つきのこうてん)
月の交点は、月軌道の、黄道面(地球の公転面)に対する交点である。つまり、天球上で黄道白道とが交わる点である。歳差により黄道上を移動しており、1周するのに要する周期は6793.5日または18.5996年である。
英語では交点をノード(node)、昇交点をアセンディングノード(ascending node)またはノースノード(north node)、降交点をディセンディングノード(descending node)またはサウスノード(south node)という。これらは交点・昇交点・降交点一般のことだが、特に月の交点を意味することもある。
古代末期から近世には、月の昇交点をドラゴンヘッド(dragon's head、ラテン語 Caput Draconis)、月の降交点をドラゴンテール(dragon's tail、ラテン語 Cauda Draconis)と呼んだ。現在でも占星術ではこう呼ぶことがある。
インドでは月の昇交点をラーフ(Rāhu)、月の降交点をケートゥ(Ketu)と呼んだ。

Vertical mixing 鉛直混合
北太平洋高緯度域において,日周潮によって急峻な地形近傍で引き起こされる局所的な強い鉛直混合が,潮汐18.6 年振動に伴って変動することで,北太平洋周辺において顕著に見られる大気・海洋の様々な 20 年変動が引き起こされているとの仮説を提唱した。周期と位相が正確に分かっている潮汐 18.6 年振動の影響が確かめられれば,10 年~数 10 年規模の海洋・気候変動予測の精度向上に資すると期待される。(海の研究