行動主義

先日のベルクソン研究会で,ある人から,「あなたの研究スタンスは行動主義ですよね」と言われ,僕はその場では行動主義についての定義がはっきりしていなかったので返事を濁したが,調べてみると僕を含め世の中で動物の行動を研究している人のほとんどは行動主義(あるいは新・行動主義)から派生したスタンスであると思われた.

行動主義は,意識は客観的に観察することができないので,刺激や反応といった観察可能な概念によって動物の行動を研究していこうとした立場である.
具体的には反射的反応の実験と観察のみから,行動を理解しようとした.刺激をS,反応をRとするとき,S-Rという図式で表そうとする.代表的な提唱者としてワトソン,スキナーらがいる.
形而上的な議論を嫌い,プラグマティズムの影響が強いアメリカで特に発展し,アメリカとその影響下の国において一世を風靡した.しかし,直接観察者に観察されない記憶・感情といった精神的な内部構造を抜きにしては行動の理解が進まないことが明らかにされると衰退し,内面的な心理モデルOを導入したS-O-Rという図式を用いる新行動主義に取って代わった.
岩波哲学・思想事典など参照

ただ,僕に関しては行動主義がいかなるものか,その限界と有効性を見据えて実験をしたいと思っている段階であり,行動主義に対峙すると思われる内部観測やアフォーダンスオートポイエーシスなどについても知りたいと思ってはいる.
プラグマティズムに関しては説明は省くが,やはりここでも現代的でアメリカ的なものの考え方と伝統的でヨーロッパ的なものの考え方の対立を感じてしまう.
元はといえば,僕はそういったところに問題を感じていたのだ.自分が拠って立つ処は「行動主義」と言われればそうかも知れない.しかし,ベルクソンハイデガーに思想になぜほれ込んでいるのか.それは,ブラックボックスについて真っ向から挑戦した人たちであるからなのだ.<心>という問題,<私>という問題は,今の研究の対極に位置していることくらいは,初めからわかっている.それでも,僕はそういった問題について考えずにはいられない.