都市計画の世界史 / 日端康雄 (2008年)

都市計画の世界史 (講談社現代新書) [ 日端 康雄 ]
★目次
第1章 城壁の都市
第2章 都市施設と都市住居
第3章 格子割の都市
第4章 バロックの都市
第5章 社会改良主義の都市
第6章 近代都市計画制度の都市
第7章 メトロポリスメガロポリス


★最近、グーグル・アースで、世界各地の都市を俯瞰して楽しんでいます。先日もニュース番組で、クルマのないドイツの環境先進都市「カールスルーエ」の様子が紹介されていて、中心市街地では自動車の乗り入れが禁止されており、市民がクルマの代わりに毛細血管のように張り巡らされた路面電車を利用して生活している様子にとても感動しました。


地球上には、古代に起源を有し、現代に活きる都市が数多いといわれます。本書は、大学の講義では簡略化、もしくは省略されがちな前近代の都市計画を詳細に紹介し、近代のそれとの関わりを知ることにより、都市とは何かを考える糧にすることを目的として書かれています。簡単に言えば、「前近代の都市計画の講義録」になるかと思います。


すごく昔に、入試問題か何かの現代文で、「日本の都には城壁がない。それは、都を盆地に築くことにより、周囲の山を城壁と見立てていたからであろう」みたいな説が書かれてあったの覚えています。しかし、本書の解説としては、「古代の日本の戦争は中国やヨーロッパの戦争と根本的に違っていて、それは国土や人民の奪い合いではなく大王や天皇の取り合いであった。天皇は「皇帝」であると同時に「神」であった」と引用文が記されています。


ヨーロッパでは、ウィーン(ハプスブルク家時代)やクレムリンロマノフ王朝)を例に見れば、王宮に近接して教会が建てられ、都は王宮と教会の二つを焦点として楕円を形成しています。一方、日本では、王宮(御所)から離れる形で、山並み沿いの周縁部(例えば平安京では東山地域)に寺社が散在しています。しかし、日本でも、一つ例外があります。それは本願寺です。都の中心に、御所と対峙するかのような位置にその腰をおろしているのです。しかも、その役割はヨーロッパとは違い、国王(天皇)に対して、その遺体を引き受けることも、その即位礼の場所として活用されることもなかったという歴史的事実が知られています。


少し話しが逸れましたが、本書はそういった政治・宗教的なことを中心に説明がなされているわけではなく、工学的に説明がなされています。四大文明流域の都市から、エーゲ海文明、古代アテネ古代ローマ、ローマの殖民都市、中世のヨーロッパの都市、ルネッサンスの理想都市、日本の都市(藤原京平城京平安京)、中国の都市、イスラームの都市など前近代の都市を様々な観点から、5つの章にわたって解説が行われています。第6章では、近代都市計画制度と題して先進国各国の各都市の法律や条例が紹介されています。最後の章では、現代の大都市について議論がなされています。


自分はあまり世界中の都市を実際に歩いたことはないのですが、綺麗な都市は本当に綺麗だと思いました。また訪れてみたいと思う場所はたくさんあります。本書で指摘されているように、地区、街区レベルにおいて、人間の五感で評価できるような総合的な都市デザインが目指される傾向が強くなっている中で、古代、中世からの都市空間の経験から学べることはたくさんあるように思われます。


本願寺がここにあるってのもそうなのかも知れませんが、どの都市も、色んな歴史的な文脈が絡み合って、今の形になっているのでしょう。「ローマは一日にしてならず」を転じて、「都市は一日にしてならず」かなって思いました。




イタリア・フィレンツェ
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