レ・ミゼラブル / ユーゴー

レ・ミゼラブル 全4冊 (岩波文庫)


★自分が最も好きな小説のひとつです。かつて盗みを犯した罪で徒刑囚となっていたジャン・ヴァルジャンの苦難の生涯が描かれています。最終的には、「彼は聖人として生涯を終えた」と言われます。逆境の彼を支えて来たのは『愛』です。


自分個人の解釈としては、彼が死ぬ間際に悟った「愛」こそが真実の愛ではないかと思います。彼はそれまで、村人のため、家族のためと、身を粉にしてほとんど無償の愛を捧げてきました。ただ、壮年期に彼が気がつかなかったものがあるように思えます。それは、自分以外の人間も同じように、もしくはそれ以上に「愛」を持っているということです。


老年期の病床に臥したジャン・ヴァルジャンは、コゼットとユリウスとのやりとりの中でだんだんと気がついていきます。「捧げる愛」ばかりでなく、「他人から捧げられる愛」があることを認める強さ(愛)が、苦難の生涯を生き抜いてきたジャン・ヴァルジャンを一人に聖人にさせたのではないかと思うのです。


自分の「愛」に執着するのではなく、人を認める強さこそが真実の「愛」だとユーゴーは言いたかったのではないかと思います。