Film: 沈黙 -サイレンス-

 

遠藤周作の『沈黙』を読んだのは中学生の時、『深い河』を読んだのは大学院時代。沈黙が映画化され、まずは洋書で読んでから、DVDを見ました。

マーチン・スコセッシ監督の映画も結構好きなので、いろいろ見たことあります。『タクシー・ドライバー』、『グッド・フェローズ』、『カジノ』、『救命士』、『ギャング・オブ・ニューヨーク』、『The Blues』、『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』あたりです。

沈黙の映画化を見終わった第一印象は、無慈悲だなということです。遠藤周作のアンチテーゼ、個人的なキリスト教コンプレックスから書いた小説の本質的なところを、手を抜かず、映像化されたんだなと感じました。

ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟のアリョーシャ的存在を設けず、主人公の宣教師を俗に落とし込んだところ、その俗の中では神というものすら語らせないことを静かに、視聴者に悟らせる音作りとカメラのアングル。素晴らしいと思いました。この映画では、大自然の海すら、狂気で、無慈悲です。太陽すら無慈悲です。知恵のない村人たちですら、血も涙もありません。どこにもだれにも神が宿っていません。仏門にすら神様的なものが感じられません。女性からはマリア様的な優しさがありません。すべての事物が、沈黙しています。ただ単に、「静か」という意味ではありません。能面のように冷たく、すべてを飲み込み、返ってくるのは、鋭利な刃物のような言葉と眼差し、あるいは重たく冷たい岩のような圧迫感です。カミュの小説でみられるような沈黙は、静的な沈黙であるとするなら、遠藤の沈黙は動的な沈黙で、執拗に絡みついてきます。日本の気候特有のじめじめした陰湿さと、ねちっこい蒸し暑さから逃れることができません。こういった世界観が、非常に上手に再現されています。

 

カミュ 沈黙の誘惑

カミュ 沈黙の誘惑

 

 

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