Books: モンゴメリ『赤毛のアン』/ 茂木健一郎

 

モンゴメリ『赤毛のアン』 2018年10月 (100分 de 名著)

モンゴメリ『赤毛のアン』 2018年10月 (100分 de 名著)

 

英語も達者で、文学に造詣の深い茂木健一郎さんの一押しの文学作品は、赤毛のアンです。10代の時に面白すぎて、英語洋書を一気に読み切ったそうです。

私も、10代の頃に日本語訳を手にしましたが、悪くはないものの、何も起こらない平凡な物語に思えて、冒険があるわけでもなく、難しい人間関係があるわけでもなく、平凡な現実世界からの逃避として小説を読んでいた思春期の頃の私には物足りなかった記憶があります。

しかし、読む人の感性や境遇によっては、とてもとても深い小説であることが、いろんな人の感想や書評を知るにつれてわかってきました。

そうした普通の人生と、夢や野望をかなえた人生ー会社をつくって成功するとか、表現者として認められるとかーは、対等であるということがわかる瞬間があって、そのことに気づけた人こそがしあわせなのではないでしょうか。その意味で、『赤毛のアン』の結末は、「普通」の日々のなかにある、底光りするような幸福を描くことに成功していると思います。

 

近年、「私はこういう本しか読みません」「こういう音楽しか聴きません」「玄米しか食べません」と、自分が出会うものをコントロールしたがる人が多いのですが、マシュウの「わたしらのほうであの子になにか役にたつかもしれませんよ」という第1回で出てきた言葉は、自分の意図と関係なく入っていってきたものをそのまま受け入れるということです。自分のためではなく、相手にために行動することで自分も幸福を感じるという、『赤毛のアン』におけるヒューマニズムの最大のメッセージだと思います。

 

 

「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法 (講談社文庫)

「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法 (講談社文庫)