Music: Let the Bad Times Roll / Offspring (2021)

 

Let The Bad Times Roll(LP) [12 inch Analog]

Let The Bad Times Roll(LP) [12 inch Analog]

  • アーティスト:The Offspring
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The Offspringオフスプリング)が、サマーソニック2022に参加すると聞き、懐かしくなりました。前作『Days Go By』から9年を経ての新作も出しています。この9年間に、バンドの「レーベルの移籍」、「グレッグKからトッド・モースへのベーシスト交代」がありました。

そして何より驚きは、デクスター・ホーランド(Keith "Dexter" Holland)が、分生物学分野で博士号を取得していたことです。悪ぶった風貌のホーランドですが、実はインテリで、1984年にカリフォルニア州ガーデングローブのパシフィカ高校クラスの卒業生総代として卒業しています。数学では学年一の成績を収めていたらしく、いわゆる、天才/秀才肌です。ちなみに、"デクスター"の愛称は、数学が得意だったことに由来します(「理数系のがり勉」という意味)。

その後、南カリフォルニア大学に進学し、生物学の理学士号、分子生物学修士号を取得、さらに2017年には分子生物学の博士号を取得しました。 オフスプリングの「Smash」(1994年)が大成功を収めた影響で、音楽に集中するために学業を中断していましたが、無事再開し2017年5月に博士論文のディフェンスに成功しました。

専門分野は、HIVのmicroRNAの分子生物学的研究で、ウイルスがヒトの自然免疫反応を回避するメカニズムとその病原性の進化について論じています。

Holland, Bryan (2017). Discovery of mature microRNA sequences within the protein-coding regions of global HIV-1 genomes: predictions of novel mechanisms for viral infection and pathogenicity. Unpublished Doctoral Dissertation (Thesis). Los Angeles, CA: University of Southern California. ProQuest 2071314868.
 Holland, Bryan; Wong, Jonathan; Li, Meng; Rasheed, Suraiya (2013). "Identification of Human MicroRNA-Like Sequences Embedded within the Protein-Encoding Genes of the Human Immunodeficiency Virus"PLOS ONE8 (3): 1–10. Bibcode:2013PLoSO...858586H.

本作の音楽はというと、いろんな意味で落ち着いた内容です。デクスターも56〜57歳のいいおじさんなので、「Pretty Fly(For A Whte Guy)」のような曲はさすがにないです。強いていうなら、「We Never Have Sex Anymore」がそれに近いノリのいい曲です。

私は当時、「Smash」(1994年)を聴いて衝撃を受けました。アイアン・メイデンの1stアルバムに近いものを探していたところ、なかなか見つからず、「ポップパンク」「メロディック・ハードコア」と呼ばれるバンド群によって奏でられていることに気がつかなかったのです。アイアン・メイデンは、パンクの影響を受けていないとリーダーのスティーヴ・ハリスは否定していますが、「Prowler」あたりを聴くと、後のメロコアに通じるものがあると思います。

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Smash」収録の「Bad Habit」は、ライブでは最高に盛り上がる曲です。この曲は、「クルマを運転中に、前や後ろに、無礼なクルマが現れようものなら、ついつい悪い癖(Bad Habit)が出てしまうんだ」って歌っています。自分のクルマに前に割り込まれたり、クルマのケツにつきまとって煽り運転をされようものなら、ついついダッシュボードに入れてある銃を取り出して、ぶっ放してしまう。と歌っています。パンキッシュ(反抗的)で、アメリカン(なんでもあり?)な曲です。

 


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アイアン・メイデンはイギリスで労働階級の虐げられた暗さと屈託したものが滲み出ていて、そこにスティーヴ・ハリスのプログレ好きが興じて、とても哀しげなメロディとドラマチックな展開の曲が特徴です。一方、オフスプリングは、アメリカのカリフォルニアで、開放感のあるカラッとした明るさと、パーティ的に盛り上がりたくなる歌メロがあり、デクスター・ホーランドなんかはインテリのお坊ちゃんでしょうから、本当はいい子でも、無理に悪ぶった感があります。

 本作「Let the Bad Times Roll」は、「Smash」(1994年)や「Americana」(1998年)のような代表作にはならないでしょうけど、オフスプリングのいいところを凝縮して、少し落ち着いた分、オフスプリングらしいメロディの佳作曲が多く、エモさが増して、じっくり聴けるのがいいところだと思います。悪くいうと、パンクっぽさが薄くなったということですが、個人的にはそれくらいが良いです。

今までよりもミドルテンポのパートが増えて、グルーヴ感は増しているように思います。


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