Music: Lost Not Forgotten Archives: The Number of The Beast / Dream Theater (2002)

 

ドリーム・シアターも2000年代に進化したバンドです。Images and Words (1992)やAwake(1994)で、すでに超人の域に達していたバンドがあれ以上どう進化できるのかと疑問に思っていました。当時の、マイク・ポートノイのドラム、ケヴィン・ムーアのキーボード、ジョン・ペトルーシのギター、ジョン・マイアングのベース、そしてジェイムズ・ラブリエのヴォーカルが奏でるサウンドは、まさに劇場型の深みと広がりのあるサウンドでした。その後も、多少のメンバーチェンジを経ながら、コンスタントに作品を発表し続けています。

このレコード『The Number Of The Beast』は、2005年に発表された、アイアン・メイデンのアルバム『魔力の刻印』を再現したライブです。ドリーム・シアターのオフィシャルブートレグ専門のレーベル「YtseJam Records」より販売されています。メンバーは、マイク・ポートノイ(ドラム)、ジョーダン・ルーデス(キーボード)、ジョン・ペトルーシ(ギター)、ジョン・マイアング(ベース)、ジェイムズ・ラブリエ(ヴォーカル)です。

ドリーム・シアターが日本ではかなり人気のあるバンドで、メタルに飽きた大人でも、「ドリーム・シアターのCDだけは売りたくない」とか、「バンドやっていて、ギターやベースが上手な人でも、「ドリーム・シアターは色々勉強になる」と言ったりと、ヘヴィメタルの域を超えた存在です。逆に言えば、「面白みがないバンド」とも言えます。悪ノリしない優等生バンドのイメージを持たれがちです。

しかし、ある時期に、ヘヴィ路線に転向した時期があり「Train of Thought」(2003)はそれを象徴しており、サウンドはかなりダークでヘヴィです。2004年には、メタリカの「Master of Puppets」再現ライヴも行っています。なぜ故に、ドリーム・シアターが?!と正直思いました。と同時に、彼らもメタル・キッズ魂捨ててないんだと、その悪ノリを披露したことに共感を覚えました。

このレコード『The Number Of The Beast』を聴いて思うことは、「ヴォーカル、キツそう・・・」です。ドリーム・シアターのLed Zeppelinのカヴァーを聴いて、Led Zeppelinが好きになったので、彼らのタイトなサウンドは好きなのですが、アイアン・メイデンのカヴァーとなると、やはり、あの独特の陰鬱さみたいなものが再現しきれてない気がしました。

ドリーム・シアターとクエンズライクって同じ時期のバンドだけあって、サウンドや歌詞世界がシンクロするものがあって、クイーンズライクのSilent LucidityやSomeone Elseが、ドリーム・シアターのアルバムに入っていても違和感ないと思います。ドリーム・シアターは、サイコセラピーや夢療法あたりの分野からインスピレーションを得ているアルバムや曲も多々あり、深く探っていくと、本当に深い音楽世界と思います。ジェイムズ・ラブリエのヴォーカルは、ライヴでは特に不安定なところが露呈し、それはスタジオアルバムがクオリティ高すぎるというのもありますが、やはり、自己主張の塊のようなヴォーカリストばかりのメタルの世界において、彼はやや神経質に映るのもあると思います。でも個人的なイメージとしては、誠実な人なんだと思います。