Books:  別冊NHK100分de名著 ドストエフスキー 五大長編を解読する / 亀山郁夫(2022)

 

ドストエフスキーの5大長編のうち、やはり「未成年」だけは登場人物のイメージもストーリーも、あまり頭に残っておらず、それ以外は、ストーリーも登場人物のイメージも自分なりにはイメージがあります。映画や他の小説を鑑賞する際にも、この人物は、ラスコーリニコフ的だなとか、父親殺しを原型にしているなとか、イワン的な問題設定だなとか、スメルジャコフ的なコンプレックスの抱え方だなとか、ムイシュキン公爵的なキャラ設定だなとかと、ドストエフスキーの小説と重ねて理解しようとする癖がついてしまいました。

やはり「未成年」だけが、イメージがないのがいまだに自分の課題となっており、解説書を通じてでもイメージ作りをしたいです。本書によれば、「家庭交響曲」で、当時の貴族社会の没落のリアリティを描いた物語です。その意味では、トルストイアンナ・カレーニナに近いのかもしれません。当時、ドストエフスキーはロシアの危機を感じ、無秩序から立ち上がり、一つの秩序へ向かって生成していく社会のプロセスを、一人の青年の成長の軌跡として描こうとしていました。瓦壊しようとするロシア社会を支える最後の砦が、家庭と考えていたようです。