1.2.1.ダーウィンの自然淘汰説‐自然淘汰による進化

進化生態学・行動生態学が基づく理論はダーウィン自然淘汰説である.その定義は,簡潔で,「生物の遺伝的性質が世代を通じて変化していくこと」である.だから,100万年間に起きた変化の積み重ねも進化ならば,連続する2世代間という短い期間で起こる現象も進化である.
進化(=遺伝的な性質の変化)を起こす要因は,自然淘汰とランダムな浮動の2つに分けることができる.自然淘汰による進化が起こるためには,
変異:個体間である性質に違いがある.
淘汰:性質が異なる個体間では,残す子の数の平均や子の生存率が違う.
遺伝:その性質は多少とも遺伝する.
の3つが必要である.

具体的には,ある集団の中に,黒い花をつける個体と白い花をつける個体があるとする(変異).花粉を媒介する昆虫の訪花頻度の違いなどにより,黒い花をつける個体のほうが白い花をつける個体よりも平均的に多くの種子を残すことができるとする(淘汰).そして,黒い花由来の種子は黒い花をつけるようになりやすく,白い花由来の種子は白い花をつけるようになりやすい(遺伝).すると次の世代では,白い花の頻度が減り黒い花の頻度が増える.
生き物の進化ゲーム―進化生態学最前線 生物の不思議を解く 参照