Study:  Building Bee Database, One Dot At a Time. NY Times. Intl. Weekly. November 14, 2021

タイトルは、「希少なミツバチの一種のマーキング調査から送粉者のデータベース構築を目指す」

・ミツバチを含むポリネーター(送粉者)は、生態系で重要な役割を担っている。顕花植物の90%近くが、また農作物の35%が送粉者のお陰で繁殖できている。ミツバチの経済的価値は、数百億ドルにものぼる。

・しかし、その価値の高さに比べて、ミツバチを含む送粉者の個体数の激減についてはまだよく理解されていない。専門家による研究は、まだその問題がいかに深刻で、どの程度の範囲で起こっているかを調査し始めたばかりの状況である。

・研究者らは、どの種の個体数が減少し、その要因は何か、そして、その種が生息地の変化に対してどのような適応をするか、その仕組みを解明しようとしている。そのことにより、今後の環境の変化(転換)への対策を講じる際の一助になる。

・北米ではミツバチは送粉者の中で最も研究が進んだグループであり、データの蓄積も膨大である一方で、過去の研究がBombus属(マルハナバチが属する分類群)に偏っていることも否めない。マルハナバチの生態や行動・生理に関する研究データや仮説が、数百いる他のミツバチの種にどの程度適用可能かは議論の余地がある。

・野生のミツバチを調査するにあたり研究のハードルを上げているのは、特定のミツバチ種に絞って調査を行う場合でも、そのミツバチが訪花する植物種、たとえばブルーベリーなどは、非常に広範囲に分布していることである。

ニュージャージー州のRutgers大学の大学院生Max McCarthyは、州北部の湿地帯に分布するParnassusという草本植物を訪花する希少なミツバチAndrena parnassiaeを捕獲し、背中にマーキングをして、すぐに放している。これは、この種の個体が生息パッチ間をどれくらいの容易に頻度で移動できるか、またどの程度遠くまで移動できるかを調査するのが目的である。

・A. parnassiaeというミツバチは、湿地性の草本植物Parnassusを特異的に訪花することが知られており、生息域が限定されている。そのため、調査地が広範囲すぎることによるマーキングや再捕獲の困難さを軽減できると考えられる。A. parnassiaeに関する研究論文はまだ少なく、この種の農業的価値はまだ見出されていない。

・この希少なミツバチの一種を研究することで、動物界において、生息地の撹乱によって動物種がどの程度影響を受けるか、いかに適応するか、またどれくらいの速度で絶滅するかなど、今後予測するためのデータベースを構築する上で貴重な研究事例となりうる。マーキング調査は地道なフィールドワークではあるが、データベースが構築されれば、世界中で利用されることが期待される。

 

キーワード
Pollinator 送粉者
植物の花粉を運んで受粉させ(送粉)、花粉の雄性配偶子と花の胚珠を受精させる動物のこと。花粉媒介者(かふんばいかいしゃ)・授粉者(じゅふんしゃ)・ポリネーターともいう。送粉者によって媒介される受粉様式を動物媒と呼ぶ。(Wikipedia

Andrena parnassiae アンドレナ・パルナシアエ
ミツバチ上科に属する。希少種。湿地帯の顕花植物を訪花する。(Discover Life

Parnassus パルナッサス
湿地帯に分布する植物の一種。(Plantlife