ミュンヘン (2005年)

ミュンヘン スペシャル・エディション [DVD]
★監督:スティーヴン・スピルバーグ
★製作:スティーヴン・スピルバーグキャスリーン・ケネディ、バリー・メンデル、コリン・ウィルソン
★脚本:トニー・クシュナーエリック・ロス
★出演者:エリック・バナダニエル・クレイグマチュー・カソヴィッツ、キーラン・ハインズ
★音楽:ジョン・ウィリアムズ
★紹介・感想:NHK新シルクロード「第4集 荒野に響く声 祖国へ」は、旧ソビエト強制移住政策により祖国を離れた人々にスポットを当てたものでした。「あなたの故郷はどこですか?」という問いかけに、ユーラシアの荒野こそ祖国だとする朝鮮族、はたまた、戦場となった故郷へ戻るか、安住の地で生きるかで揺れ動くチェチェンの人々。祖国を遠く離れて生きる人々の怒り、苦悩、諦めなどの入り混じった複雑な状態が映し出されていました。
イスラエルの地を中心としたユダヤ人、パレスチナ人の問題は、一言では言い表せない非常に複雑な問題です。ただその根底にあるものの一つに、それぞれの民にとって「自分達の祖国はどこか」という問題があることは誰しもが理解するところです。スピルバーグ監督の「ミュンヘン」は、色々な問題を提起し、観ている人に様々な意見を持たせる内容ですが、僕は、特に、登場人物各人の「祖国」のイメージを強く受け止めることができました。主人公のアヴナーは、妻に「君が僕の祖国だ」と伝えます。一方で愛国心の強いアヴナーの仲間の暗殺者の仲には、ユダヤ人の故郷はイスラエルだと強い信念を持っているものもいます。アヴナーは、ブラックリストの居場所の情報を得るために、フランス人の情報家ルイとその後ろ盾をしている情報企業家の親分(パパと呼ばれる)に多額の情報提供料を支払います。情報企業家の“パパ”は、数多くの子どもたち(孤児)と菜園を手入れしながら暮らしており、「どんな国家も信用できない」ととても厭世的です。
この映画、主人公のアヴナーも情報企業家の“パパ”もとても料理上手です。これは何かのメタファーでしょうか。血なまぐさい惨劇のシーンと交互に出てくる食事のシーンは、家族や仲間というものを強く感じさせます。フランスに住むパレスチナ人の幼い娘が、可愛らしい“赤い服”を着ているところが、シンドラーのリストを思い出させました。
観れば観るほど、色々なメッセージが浮かび上がっている深みのある映画ですね。


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