哲学の誤読 / 入不二基義

哲学の誤読 ―入試現代文で哲学する! (ちくま新書)
★大学の入試問題に実際に出た、野矢茂樹「他者という謎」、永井均「解釈学・系譜学・考古学」、中島義道「幻想としての未来」、大森荘蔵「「後の祭り」を祈る」という文章を題材にして、出題者、解説者、入不二自身、執筆者それぞれの「誤読」に焦点をあてることにより、哲学の輪郭を逆照射する試みがなされています。たった4つの文章に対してかなりの頁をさいて議論が行われています。
本書で扱われている問題文を読むことも、入不二の解説を読むことも、とてもいい頭の体操になります。すばらしい文章は、一文一文が一つの命題になっているものなんですね。こんな風にしなやかに文章を書くことができ、一方で、こんなに慎重に読むことができればと思います。
個人的な癖として、哲学と呼ばれる文章に対して、「べき」とか「いい」というような道徳的あるいは人生内的な価値の視点、すなわち人生論的な解釈をしてしまうところがあります。これって、一番初歩的な「誤読」ですね。自分の中にある知識の予断というフィルターを取り除く訓練も必要です。


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