経済学の名著30 / 松原隆一郎(2009年)



経済学の名著30 (ちくま新書) [ 松原隆一郎 ]


★大企業同士のM&Aによる巨大化、非正社員の増加、また、配当と経営者報酬が伸びただけで、労働者の賃金は増えておらず、資本家が労働者を搾取するがごとき様相。このような経済の状態は、まさにマルクスの『資本論』の世界であるといった意見を聞くことがあります。
本書は経済学の古典を30冊紹介したものです。冒頭に宣言してあるように、それぞれの著者の意見をできる限り再現し、歴史的な経緯もふまえて紹介がなされています。このようにことわる理由は、この分野では、しばしば特定の学派の優位が示されたり、曲解がなされたりすることがあるからだそうです。
得たい知識によるかもしれませんが、いわゆる「古典」を読む場合は、時代背景や歴史的あるいは思想史的な流れを把握しつつ、周辺の「古典」や「文献」もある程度読みながらでないと、理解したことにならないように思います。個人的にも、古典を読むとは、実は大変な作業なんだと思いはじめました。しかし、それに余りあるくらいの刺激があるのも事実です。毎日少しずつ仕事の時間の合間を縫って、古典を読み進めてゆく生活のスタイルは「幸福」と言えるのかもしれないと個人的には思っています。
このように、新書程度の分厚さで、名著の紹介を読むことは、一つの講義を聴講しているのに、ある意味では近いものもあります。ただし、議論の場にならないのですが。ちなみに、ちくま新書からは、この類のものとして、「歴史学」「政治学」「社会学」「宗教学」が出ており、教養のない自分にとってはよいガイドとなりそうです。