熊本マリ / 第15回リレー音楽祭 570夜

リレー音楽祭」にて、熊本マリさんの演奏を聴いてきました。


ショパンの代表曲4曲、モンポウ3曲、ラレグラ1曲。アンコールに3度も応えてくださって、ファリャ、ポンセ、マスカーニの曲が聴けました。


熊本マリさんいわく、ラテン諸国の国民性は、音楽にもサッカーにも表れているとのこと。心が赴くままにプレイする感じ。理論の構築はその後。逆に、ドイツなど北のほうの音楽は先に理屈ありきの感じがするとのこと。


そういえば、自分がクラシックへ入っていたのは、かなり変わった感じだったかもしれません。20代前半のころ、ジャズピアニストのビル・エヴァンスの音にかなりはまっていました。その延長で、クラシックでもああいう感じの音楽ないかと探し始めたのがきっかけです。


そのとき出会ったのが、ラヴェルドビュッシーモンポウピアノソナタでした。とくにフェデリコ・モンポウの音楽には感動しました。


フェデリコ・モンポウ1893年- 1987年)は、スペイン・カタルーニャ州出身。ガブリエル・フォーレが開いた演奏会に接したことから、作曲家になることを決心したそうです。モンポウは小品作家としてとりわけ名高く、「繊細」「内省的」「静謐」と評されます。一方で、ある種の魔術的・瞑想的な響きもするといわれるようです。


ビル・エヴァンスは、「インタープレイ」といって、スタンダード楽曲を題材とした創意に富んだアレンジと優美なピアノ・タッチの演奏をいち早く取り入れました。簡単に言えば、対話式の即興演奏。その演奏スタイルは、後のハービー・ハンコックチック・コリアキース・ジャレットといった多くのピアニスト、ジョン・マクラフリンといったギタリストにも影響を与えました。


モンポウの音楽には、どこか東洋的なものを感じます。情熱的なラテンの国特有の解放感は、あまり感じられず、内省的で、どこか密教的なものがあるように思うのです。


かつてスペインは西洋と東洋の出会いの国だったようです。8世紀初頭から約800年間イスラムに統治されており、そこへ北インド起源のジプシ−達が中東を経由し、東洋の文化を持ち込んだという歴史があります。スペイン音楽は、音階、メロディーも、リズムも、オーストリアやドイツの音楽と一種異なるものがあります。それは、歴史的に東洋のエッセンスが加わったせいでしょうか。


熊本マリさんの演奏を聴いて感じたことは、ショパンよりもモンポウやファリャのようなラテン系の音楽の方がしっくりくるということです。個人的には、ショパンのしっとり感があまり感じられなかったです。しかし、これも自分が「ショパン」という先入観を持っているからでしょう。ジャズとクラシックは解釈(演奏)ありきなところが共通していると思います。


モンポウショパンの楽曲をモチーフに変奏曲をいくつか遺しているそうです。ファーストネームフェデリコ・モンポウフレデリック・ショパンも共通しています。この二人の接点に注目された熊本マリさんはセンスがいいですね。


やはり、熊本マリさんがモンポウポンセの内省的な曲を演奏されたときはやはり一流のものがあると思いました。ぼくはスペインやメキシコにいったことはないですけど、なんとなく雰囲気がわかります。