Books: Pen 尾崎 豊、アイラブユー

 

思春期の頃は尾崎豊は聴かなかったです。20代になって聴くようになり、10年くらいかけて少しづつ馴染んでいきました。大人(社会人)になってから聴く人も意外と心にグッと刺さるのでは?というのが私の印象です。好きすぎると、周り見えなくなって、雑誌や書籍での論評やコメントも客観的に読めなくなる場合もあり、それはそれでいいのですが、好きだからこそ、いろんな角度からみたいというのが私の楽しみ方です。雑誌にならって、My Bestを3曲選びました。勝手に。

 

My Best 3


1.  街の風景

驚愕のクオリティのデビューアルバム。その1曲目を飾る曲。尾崎豊の歌詞は美しい。情景描写から始まり、少しずつアングルを変えながら、心にフォーカスする。内面の吐露に終始せず、さっと視点を遠くにやり、客観的に自分をみたり、相手の心を察したり、目の敵であるはずの教師たちやサラリーマンに同情したり。「感情をストレートにぶつけているだけ」「若気の至り」と言われがちだが、実はそうではない。むしろ、達観している。見えすぎている。感受性が強すぎがゆえに、生きることが、ハードだっただろうと思う。

 

2.  誕生

いくつもの困難を乗り越え、2枚組の5thアルバム。尾崎の第2ステージ幕開けとも言える。タイトルトラックの本作は、親の目線で書かれたとも読める歌詞。自分に言い聞かせるように歌い上げる。困難を乗り越え、自分にとっても、我が子にとっても、家庭としても、新たなスタートへの意気込みと覚悟が伺える。誕生のタイトル通り、躍動感が溢れる10分に迫る大作。尾崎が音楽活動を続けていたとしたら、人生のイベントごとに、全力投球の音楽を作っていたのではと思う。

 

3.  贖罪

残念ながらラストアルバムになってしまった6thアルバム「放熱への証」の5曲目。哀愁漂うメロディの乗せて、孤独と虚無感漂う。アルバムジャケットは、まるで十字架の上に磔になっているようにも見える。本人は、もう最後だと悟っていたのでは。尾崎豊に求められるのは、1stアルバムのようなに10代の代弁者、一方、本人はミュージシャンとしての成長を目指していた。「求められるもの」と、「持っているもの」との間でのジレンマは、クリエイターなら誰しも感じる葛藤。本人は過去の作品のパロディに甘んじたくはないが、ファンは過去のパロディを聴きたい。尾崎豊が、魂のレベルで一緒に活動できるようなパートナーと巡り合っていたら、違っていたのかもしれない。