Study: Cicadas Emerge on the Menu, Adding Both Nuance and Nutrition. New York Times. July 4, 2021

タイトルは、「セミが食卓に出現。新しい味覚と栄養を付加する」(2021年7月4日の記事)

セミは、メキシコ、タイ、コンゴなど多くの国で食されている。タンパク質に富み、肉類よりも安価である。大量に発生するため種の存在を脅かすこともなく、土地への負担も少ない。

アメリカはコネチカット州ニューヘイヴンのウッドブリッジでは、寿司店「ミヤ」を営むブン・ライ氏(47歳)が、セミを使った夕食レシピを開発した。ここ最近、彼はレストランの経営方針を、アウトドアで食事を楽しみながら、メニューも自然に近いものへとシフトさせている。彼の母ヨシコ・ライ氏(77歳)は日本の九州出身で、レストランの創業者であるのだが、ブン氏も幼い頃は九州で過ごしたので、セミの鳴き声を聞くと、日本の夏を思い出すという。セミは夏と再生の象徴であるとも言う。母の幼い頃は、ハチの幼虫を食べていた。

ライ氏は、2013年にジェイムズ・ベアード・ファンデーションのベスト・シェフ賞(James Beard Foundation Nominee: Best Chef Northeast)にノミネートされたばかりの時期に、セミ(ブルードII)を食材にしたメニューを提供すると宣言し、メディアで脚光を浴びた。

アメリカには、昆虫食が全く普及していないわけではない。食用のために、その独特の風味と見た目を隠すために味が調整されたり、粉末にされたりして利用されている。例えば、コオロギを粉末にして、ブラウニーやチーズチップスに混ぜ込んだり。しかし、ライ氏は、セミのそのままの姿の残しつつも、生食、ロースト、スモーク、ボイルなどの調理を施したいと考える。

アメリカでは、セミは局所的大量に発生するため捕まえることは簡単ではない。そのため、メニューも食材確保のギリギリまで思案することになる。

ブルードXの個体を使ったメニューとして、コンゴセミの炙り焼きガーランド、日本風セミご飯(豆の代わりにナッツの香りのするセミを使った)、海藻と牡蠣の出汁を使った生セミ赤味噌スープ、セミとチーズをトッピングしたピザなどがある。

家庭でもセミ料理は可能という。公園でセミを採集することを薦める。なぜなら、土壌が農薬で汚染されているリスクを避けられるからだ。

セミサステイナブル(持続可能)な食材である。他にもイナゴなど突発的に発生する種にも注目する。ブルードXのセミは、生物的に多様な食材が日の目を見る機会になればと考える。

ライ氏の母ヨシコ氏も現役シェフであり、アメリカで寿司店を開店させた時は、「アメリカ人は生魚なんて食べない」と言われた。しかし、今ではスシレストランは至る所にある。彼女もまた、昆虫食にも同じ期待を寄せる。

 

キーワード

New Haven ニュー・ヘイヴン。アメリカのコネチカット州にある都市のひとつ。

イェール大学がキャンパスを構える学術都市としてつとに有名である。また、ニューヘイブンはアメリカ合衆国におけるピザ発祥の地のひとつでもある。

 

Brood X ブルードX

2021年4月5月に、アメリカのワシントン特別区をはじめ米国東部では、膨大な数のセミが集団発生した。17年周期で大量発生する「ブルードX」と呼ばれる周期ゼミ(素数ゼミ)の集団で、その数は数兆匹と言われる。地中から出てきた幼虫は、茶色い殻を脱ぎ捨てて成虫になる。羽化したばかりの成虫は白くて柔らかい体をしているが、数時間後には翅(はね)が伸び、黒っぽい色の体に赤い目をした姿になる。