Study: Heroines in Anime Show 'Real' Resolve. New York Times. Intl. Weekly July 10, 2022

タイトルは、「アニメのヒロインが見せる”リアル”な決意」。

・映画における女性の描かれ方に際して、日本のアニメ界のヒロインは、アメリカ映画のヒロインよりも、多くのテーマを担っており、複雑である。

細田守の「ベル〜竜とそばかすの姫」(2021)では、女子高生の「すず」は、現代の若者らしくオンラインでアヴァター(ネット上でのキャラ)である「ベル」を持っており、仮想世界Uでは、歌の女神として世界的に有名である。一方、現実世界でのすずは、田舎町のイントロバート「いわゆる陰キャ」であり、幼いことに母を失ったトラウマで塞ぎ込んだような性格で自分に自信がない。しかし、その愛情と過去の傷を反映したのか、「ベル」の歌声は人々の心を癒す。

・すずは、彼女の母親が名も知らない少年を助けるために濁流渦巻く河に飛び込んだことに対して、哀しみと憤りを重ねている。アメリカ映画なら、失った親に対してそういった感情は描かれないかも知れない。

・このアニメ映画は「美女と野獣」をモチーフにしている。原作者で監督の細田守は、ディズニーで『塔の上のラプンツェル』や『アナと雪の女王』、『ベイマックス』などを手がけたアーティストもこの映画制作で起用しているのだが、彼はこう語る。「ディズニーのアーティストたちは、ベルを前作よりも自立した、知的で現代的な若い女性に仕上げています。 彼女は「貧しい田舎町」よりも刺激的な生活を望んでいました。それは白雪姫やシンデレラが決して口にしなかった願望です。アニメーションや女性が主人公というと、いつもおとぎ話のような物語に行き着くものです。しかし、彼らはそのテンプレート(固定観念)をまさに壊してくれたのです。とても新しい感じがしました。」

新海誠監督の「君の名は。」では、ヒロインの三葉は、自身の恐怖心を乗り越え、飛騨の田舎村の住人を助ける行為をなすのだが、決してはそれは「超能力」によるものではなく、強いていうなら、誰でも強い意志があればできたことである。

・日本のアニメ映画では男性が監督であるのが主流であったが、最近では女性がプロデューサー、ライター、ミュージシャンなど、重要な役割を担ってきており、彼女らの映画の少女や女性の登場人物のキャラ設定や役割に対する影響も少なくない。

・複雑な心境を抱えたヒロインというのは、この映画が初めてではなく、草分け的アニメ映画となったのが、宮崎駿の「千と千尋の神隠し(Spirited Away)」であるが、この映画は、宮崎氏の日本の思春期の少女たちに提供される表面的な娯楽に対する彼の不満から生まれた。

・宮崎氏は、こう語った。「主人公は、10歳の少女が自分と等身大だと思える典型的な女の子にしたかったのです。しかし、実際はそういうキャラを作るのはより難しい作業なのですが。」

 

映画「竜とそばかすの姫」を観た所感
やっとテレビで「竜とそばかすの姫」放映されました。職場の人がおすすめしていたので、楽しみにしていました。

音楽に満ちていてよかったです。

美女と野獣」がモチーフになっています。「オペラ座の怪人」にも近いです。

細田守らしく、SF要素があり、「マトリックス」や「アバター」の概念が、現代ぽいです。

米紙「ニューヨークタイムズ」にも最近ヒットしている日本のアニメ映画として紹介されていました。「普通の女の子」が主人公になるところが、ひとつの特徴だと書かれていました。細田守の意図は、「白雪姫」や「シンデレラ」では描かれていない観点をヒロインに持ち込むこと。実際にすずは、典型的なヒロインよりももっと複雑な性格で、よりリアルな等身大の思春期の女の子です。

ワシントン・ポスト」では、は細田守監督のコメントを交え、「女性のエンパワーメントをテーマにしたこの作品は、少女や女性を弱く、空虚で、過度に性的な存在として描くことが多い日本の代表的なアニメ映画やグラフィック・ノベルのスタイルを覆すものとして注目されている」と報じられています。

女性の主人公というと、宮崎駿の映画ですが、ナウシカやシータは、どこか神がかっているところがあります。等身大というと確かに「千と千尋の神隠し」かもしれません。

等身大の女の子の声という意味では、この映画は確かにリアルだと思います。そう言った会話の部分ってあまり今まで描かれていなかったのかも知れません。むしろ、そういった点を削ぎ落としてきたのが映画のヒロインかもしれません。シンデレラや白雪姫は清貧であり、理想的ではありますが、実際にそんな人いるのかな?と思わせられます。一方、日本の従来のアニメのキャラも、性的であったりメイド的であったり、男性が理想とする作られた少女感はありました。

この映画は色んなメタファーに満ちています。ルカちゃんのキャラもそうだと思います。羨望の的でありながら、好きな男子に前ではテンパってしまう。人間味があります。

すずの母が川に入り、少年を助ける行為は自己犠牲そのものでありますが、すずはそれに対する憤りと悲しみを積み重ねていきます。しかし、自分も誰かを助けるために自己犠牲的な行為をします。

仮想世界Uでの「ジャスティン」も正義を掲げる自称警察の危うさを表現している気がしました。ネットの世界に警察は必要かどうかというリアルな問題です。

潜在的な自己が引き出されるというところにロマンがありました。自分も気がつかないような、人々を癒すような歌声を持っていたとしたら、アバターを通じて、他者を自己犠牲的に助けられる強い意志に駆動されるとしたら、本当の自己に気がつくきっかけがあるかもしれないというところが夢があります。

 

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