Books: シアン / 稲葉浩志(2023)

 

B'zの稲葉浩志さんの著書を買いました。B'zやソロの楽曲の歌詞、インタビュー、直筆ノート、ポートレイト写真が掲載されています。

目当ては、The 7th Blues(1994年)の頃のインタビューからあの頃の楽曲を紐解きたかったのですが、自伝とは趣が異なるため、内面的なことはそれほど語られていなくて、B'zのお二人はいつもそうなのですが、あっけらかんとした様子でインタビューに応じるところがあります。稲葉浩志さん単独でも、その調子は変わらず、良くも悪くも暗く思い詰めたところがなく、スランプとかってあるのかな?という印象さえ受けます。人間なので仕事でもプライベートでも色々あるでしょうけど、いつだってB'zはB'zであり続けてきたように思えます。ソロでは、B'zに比べると、楽曲が大人しい分、歌詞では等身大の自分が描かれているように読み取れます。しかし、音楽活動としては、自分のエゴで自分が潰されることがなく、コンスタントの芸術活動を続けてきたように見えます。ファンとしては、少しの「綻び」くらいみつけたかったのですが...

インタビューではむしろ、プライベートな色々ではなく、むしろ、阪神淡路大震災や、東日本大震災パンデミックと地球規模の出来事を目の前にして無力感を感じて、創作活動に挑んだことの方が多く語られています。見ている視野が、やはりスケールが大きいのがわかります。ただし、歌詞としては、「僕」、「あなた」と言ったように、一人称、二人称の軸を中心に描かれており、これは明らかに震災のことを歌ったんだと読み取れないことが多いです。

オラオラ系のロックに、弱い自分を曝け出す歌詞を乗せるというのはデビュー当時からのテーマだったようですが、元々国語が苦手で、読書も好きじゃなく、作文も嫌いだった稲葉少年にとって作詞という創作活動は、相当な試練だったと語られます。自分を曝け出すことの恥じらいがかなり強かったようです。

ボブ・ディランノーベル文学賞を受賞した時にも議論になりましたが、作詞家が音のニュアンスと流れを感覚的に掴むという意味では、歌詞は歌詞だけで成り立たないのかもしれません。しかし、村上春樹さんも語っているように、「音楽が流れるように文章を書く」といった感じを持っている作家もいるので、高次のレベルでは、日本語とか英語とかって言語レベルで言葉が紡ぎ出されているのではなく、「音」と「流れ」が溢れ出ているのかもしれません。

 

 
 
 
 
 
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