ブラームス『クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115』

モーツァルト:クラリネット五重奏曲
★曲目
1. クラリネット五重奏曲イ長調K.581(モーツァルト
2. クラリネット五重奏曲ロ短調op.115(ブラームス
★演奏:レオポルド・ウラッハ、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団


★「音楽を聴く感性というものは、個人の中で、植物的に、静かに、時間をかけながらゆっくりと育ってゆくものなのかもしれない」 ブラームスの『クラリネット五重奏曲』を聴くたびにそう思います。
僕は、ブラームスの曲は、ほぼ一通りは聴いたつもりですが、この曲は、初めて聴いたときに最もピンとこなかった曲であり、一方で、今では最も好きな曲でもあります。
58歳のブラームスは、マイニンゲンの公爵の招きで、宮廷楽団のクラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトの演奏するモーツァルトクラリネット五重奏曲とウェーバークラリネット協奏曲を聴き、大変感銘を受けたそうです。その後、ブラームスは、ミュールフェルトにクラリネットの奏法と表現能力を熱心に教わり、彼のためにクラリネットを伴う室内楽曲を4つ(最初にクラリネット三重奏曲作品114、続いてこのクラリネット五重奏曲作品115、そして2つのクラリネットソナタ作品120)書きました。
このクラリネット五重奏曲もそうですが、弦楽五重奏曲、ピアノ・ソナタなど、ブラームスが晩年に書いた室内楽曲は、まるでひっそりと打ち明けられる内緒のメッセージのようで、ブラームスの中で長い年月をかけてゆっくりと形を変えてきたものが垣間見られるような気がします。静かに湛えられた水面の下には、静寂、孤独、苦悩、寛容、官能、夢、情熱が潜んでいます。