羊をめぐる冒険 / 村上春樹(1982年)

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)


羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)


★人間の身体には、目に見えて手で触れることのできる「見える身体」と、そうでない「見えない身体」のようなものがあるのではと思う事があります。実生活では、「見える身体」が横のつながりをなんとか維持していてとしても、「見えない身体」の超越的な縦のつながりが途切れてしまっているケースがあるのではと思います。そのような場合、実生活ではその場その場でなんとかやりくりできても、生きている実感がないように感じられるのかもしれません。
この小説に出てくる人物の何人かは、「見えない身体」のつながりが失われてしまったように見えます。この場合は、「羊」の怨霊のようなものに身体を乗っ取られたように描かれています。