この小説は、村上作品の中で、自分が初めて先に英訳版から読んだ作品です。その後に、日本語原著を読みました。
しかし自分自身を感じるときに出て来る感情は、ポジティヴなものはまずない。高校のときの「完璧に調和した世界」にあったような心地よいポジティヴな感情は周囲と自分を融合させる。しかし否定的な感情は他との融合を阻み、自分だけのものとして立ち上がりやすいのだ。そしてそのネガティヴな感情を体験することがどんなに辛いことであっても、自分を感じるというこは、生きていくために不可欠なものなのである。この夢は、個としての意識をもつために必要なものだったのだ。
岩宮 恵子. 増補 思春期をめぐる冒険:心理療法と村上春樹の世界 (Japanese Edition) (Kindle Locations 3515-3516). Kindle Edition.
岩宮恵子の増補版に『色彩を・・・』についての考察があり、ふと、この小説のことを思い出しました。「自分を感じる」というのは、思春期だけでなく、大人になり、社会で生きていてもありうることだと思います。特に、新しい環境に入った時など、特にそれが強まる機会は増えます。