Study: A New Tool Uses Old Images To Help Find Killer Asteroids. New York Times. Intl. Weekly. June 12, 2022.

タイトルは、「キラー小惑星の発見に過去画像を再利用する新ツールが登場」。

天体望遠鏡の画像から小惑星の軌道を探知するアルゴリズム「THOR」を、このほど米国の非営利組織が発表した。地球に衝突する恐れのある小惑星(キラー小惑星)を事前に発見し、地球への衝突回避につなげることが狙いである。

・2022年5月31日、米国の非営利組織「B612財団」は、100個以上の小惑星を発見したと発表した。しかし、新しい天体望遠鏡を設置したわけでもなく、既存の装置を利用して天体観測を実施したわけでもない。

・B612の共同代表である、元米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士のエド・ルー博士は、過去のコンピューター解析する新たなアルゴリズムを完成させた。そのアルゴリズムにより、NSF国立光赤外線天文学研究所(NOIRLab)にデジタル・アーカイヴされている41万2千枚もの画像に写る680億の光の中から小惑星をふるい分けた。

・直径140メートル以上の小惑星は、地球近傍には2万5千個あることが予測されるが、そのうちの40%が発見できた。一方、残り60%の小惑星、すなわち1万5千個については、まだ未発見である。

・「THOR(Tracklet-less Heliocentric Orbit Recovery)」と名付けられたこのアルゴリズムは、Trackletと呼ばれる、短時間(画像数フレーム分の時間)の追跡処理を画像中の多数の光点に対して行うことで得られる軌跡情報の集合を処理する。夜空を撮影したさまざまな画像に見られる光の点を高い演算能力によって照合し、それらをつなぎ合わせて太陽系を移動する個々の小惑星の軌道を割り出すことができる。B612財団による22年5月31日の発表によると、すでに104個の小惑星を発見したという。

・THORは「Google Cloud」を用いたオープンソースの計算システムであるADAM(Asteroid Discovery Analysis and Mapping、小惑星の発見・分析・マッピング)と呼ばれるプラットフォーム上で動作する。

・THORの開発チームが最初に捉えたのは地球の周辺に存在する小惑星の軌道ではなく、火星と木星の間を周回する小惑星帯のものだった。つまり、その軌道が地球に重なるおそれはないとされる。

 

キーワード
Heliocentric orbit 太陽周回軌道
太陽を中心として周回する軌道(公転軌道)である。太陽系のすべての惑星、彗星、小惑星や多くの宇宙探査機や多くの人工的なスペースデブリが該当する。月の公転軌道は太陽周回軌道ではなく地球周回軌道であるが、地球の公転速度も含めて考えると太陽の影響の方が強い。(Wikipedia

Tracklet 軌跡情報の集合
短時間(画像数フレーム分の時間)の追跡処理を画像中の多数の点に対して行うことで得られる軌跡情報の集合であり,各点の追跡には正確な処理を必要とせず演算コストが低い.また多数の点に対する追跡処理を行うため隠れに強く,ロバストに人流推定できるといった特徴がある。(デジタルプラクティス

National Science Foundation's National Optical-Infrared Astronomy Research Laboratory, NOIRLab NSF国立光赤外線天文学研究所
アメリカ合衆国連邦政府が資金を拠出する地上光学・赤外線天文学のための研究組織。(Wikipedia