Books: Young Guitar 2021.11

僕は10代の頃、バーン!誌(B!誌)か、ヤングギター(YG誌)かと言われれば、絶対にB!誌派でした。中3の頃からエレキはやっていたけれど、言論色の強いB!誌が読んでいて面白く、エレキの練習は疎かになっていました。YG誌を買ったのも人生で3回ほどでした。

今回、メタル特集で、伊藤政則氏の巻頭インタビューという無茶な(?)企画になっていたので購入しました。伊藤政則氏は、B!誌を読んでいても、ラジオを聴いていても、メタルやハードロックの文字があるところには必ずといっていいくらい登場する人物です。メタルへの愛に溢れた人です。メタルバンドのメンバー(ロンゲで、全身タトゥーというイカツイ人も多い世界ですが)たちを、まるで我が子のように世話をするお母ちゃんのような存在です。ファンに人気のあるバンドを、なんとか来日を実現させようと親身になって日本の音楽業界で地道にプロモーションします。一方で、インタビューやアルバム・レビューで繰り広げられる表現力豊かなで絶妙な言語能力、また音楽シーンの動向や社会背景を鋭敏に察知する観察能力など、見た目の「普通のおじさん」とは裏腹な能力を秘めた方なのです。愛情に溢れ、かつ頭脳明晰なのです。そしたら、音楽を音楽として聴いているのかと思われるかもしれませんが、音を分析する能力にも長けておられるのは、アルバムレビューを読めばわかります。感性豊かであることが下地になっています。

伊藤政則氏の凄いところは、B!誌での論調と、YG誌での論調が、本質は変えずに読者を想定して変えているところです。B!誌は、リスナー型のマニアが多く、YG誌はギターキッズが多いと思います。B!誌では、作品について微細なところをしっかり押さえています。YG誌では、「メタル」らしさのサウンドの観点から語っているように見受けられます。雑誌では読者を、ラジオではリスナーを想定した論調や説明の仕方を変えていく。しかし、そこには愛情があってこその批評であるのですから、これはまさに「メタル・ゴッド」ですね。父性と母性の両方を持つ存在です。

雑誌の中身の感想はと言いますと、アイアン・メイデンの新作をギターの観点からもっと分析しているのかと思いきやたったの2ページだけ。ただし、マーティ・フリードマンによる「Writing On The Wall」のギターのフレーズの解説がありますが。

案外、BABYMETALのKOBAMETALさんのインタビューも楽しめました。最前線で活躍するだけあって伝統もしっかり押さえつつ、斬新な視点も持ち合わせておられます。アイアンメイデンの新作を評価しつつも、メタリカのカバー集「The Metallica Blacklist」も楽しんでしまうところさすがと思います。BABYMETALは、確かB!誌では扱われないと思うので。

 
 
 
 
 
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A post shared by Shuji Kuroda (@lalakoora)