Books: BRUTUS 特集:村上春樹 上「読む。」編(2021)

 

ノーベル文学賞を受賞したことを想定していたのでしょうか。残念ながら...でしたが、村上春樹の魅力が損なわれることはありません。ボブ・ディランが、カズオ・イシグロがと思うと、やはりとは思いますが、いつかきっとその日が来るでしょう。業界にとってはこういう状況が続く方が、話題が長続きして、ビジネス的には儲かるのだとか。村上春樹さんも、最近は、以前いくらべるとメディアへのインタビューに気軽に答えているように感じられます。達観の境地ですね。

今年の10月に早稲田大学村上春樹ライブラリーがオープンしたそうです。これは近いうちに観に行こうと考えています。

村上春樹さんは、深いところで「向こう側」と取引をした人物だと思います。どの世界でもクリエイティブな人というのは、「向こう側」にひっぱられてしまうのですが、その代わりに何かは犠牲になっているのかもしれません。彼は、「選ばれた人」でしょう。エッセイだけを読むと、なかなかわかりませんが、長編小説は、もはやSFです。技術用語を使わないSFストーリーだと思います。

村上春樹さんは翻訳家としての顔をお持ちです。アメリカ文学の研究者であり、日本ではあまりしられていない作家や女性作家の作品も短編集などで編んでいます。アメリカ文学の日本への紹介という研究が、もっとグローバルな価値観として認められたなら、ノーベル文学賞も必至と思いますが、なにぶん、日本語というものが世界においてどれだけシェアがあるかというと、小さいと思います。もしアメリカ文学の中国語への翻訳ならインパクトも変わってくるかもしれません。

私にとって村上春樹さんは、「こんな風に生きられたらな」と思う人のひとりです。

 

 
 
 
 
 
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A post shared by Shuji Kuroda (@lalakoora)