伝承農法を活かす家庭菜園の科学 / 木嶋利男(2009)

伝承農法を活かす家庭菜園の科学―自然のしくみを利用した栽培術 (ブルーバックス)


★目次
第1章 家庭菜園とは何か
第2章 家庭菜園を知るための農法
第3章 野菜作りの基本
第4章 作物栄養の基礎知識
第5章 病害虫から作物を保護する
第6章 コンパニオンプランツ
第7章 植物の生理・生態を利用した栽培技術
第8章 上手な家庭菜園
終章 未来への展望


★最近、ホームセンターなどに出かけると、園芸のコーナーが結構賑わっていることに気づきます。安心・安全志向が高まる中で、プチトマトやハーブくらいなら自分でやってみようと思う人が増えたのでしょうか。それとも、節約志向で庭先で花を育てることの延長として「食べられるもの」も作ってみようと思う人が増えたのでしょうか。自分も昨年はベランダや畑で野菜を栽培してみましたが、なかなか一筋縄ではいかず、色々と苦労しました。そのためか、少しくらい形が変でも渋くても美味しく感じられました。しかし、その反面、スーパーに並んでいる野菜や果物を選ぶときには、反射的に綺麗なものを選んでしまう自分がいるのも事実です。
少しでも土をいじって作物を栽培してみると、化学農薬や肥料の多施用を行わずに、綺麗で美味しくて安全・安心の食物はできないものかと考えるのは自然な流れかもしれません。しかし、それは案外難しいことであることも実感できます。
この悩みに対する答えは、もしかすれば、古くから伝わる伝承農法の中にあるのかもしれません。伝承農法では、化学肥料や農薬は使用されず、自然の仕組みが上手に活用されていると言われます。最近では、その効果が科学的にも解明されるようになってきています。本書は、家庭菜園で必要と思われる栽培技術が網羅されています。伝承農法について科学的に説明しながら、畑の耕し方、土作り、混植、病害虫の防除、種採りまで紹介されています。特に、コンパニオンプランツ(共栄植物)は生物の多様性の維持に貢献する可能性が高いと考えられています。個人的にも、昨年くらいからこのコンパニオンプランツについて、天敵に働きにどのような影響を与えるかなどを含めて興味を持っています。
それにしても、これだけのことが1,000円弱の新書サイズの書籍で取り扱われているのはすごいと思います。また、科学的に証明されているのは、まだほんの一部でしょうから、こういう書籍をきっかけに、各地で伝えられてきた伝承農法が公になり、科学的にも解明され、他の地域でも適用されるようになれば、農業の活性化につながるのではと思いました。