Books: The Bhagavata Purana: Sacred Text and Living Tradition / GUPTA Ravi M. and Kenneth R. VALPEY eds. (2013)

 

 

バーガヴァタ・プラーナの解説書。表紙の写真がまるで博学な聖仙スータが、研究熱心なショウナカを筆頭にした聖仙らに物語を語り聴かせる光景をモチーフにしているようです。

『バーガヴァタ・プラーナ(あるいはシュリーマド・バーガヴァタム)』とは、「至高の主についての聖典(シャストラ)」であり、ヴィシュヌの帰依者(デヴォティ)たちの物語です。12編(カントー)から成り、合計332章、詩句数で16,000句ないし18,000句に及びます。

ヴィシュヌとは、ヒンドゥー教えの三大主神のひとり。その最大の特徴は化身(アヴァターラ)を多く持ち、それによって生き物たちを救うことにあります。

「バガヴァーン」とは、ヴィシュヌの化身(アヴァターラ)の一人であるクリシュナを指します。全編を通して、バガヴァーンには、ヴァスデーヴァ、ナーラーヤナ、ヴィシュヌ、ハリ、クリシュナ、至高の主、ムクンダと様々な呼称があります。

聖典では、至高の主についてあらゆる観点から描写されており、教義が示されている。全18種のプラーナ文献の重要な教義が全て網羅されているために、マハー・プラーナ(最も偉大なプラーナ文献)として位置付けられます。また、他のプラーナ文献と同様に、宇宙論天文学家系図、地理学、伝説、音楽、舞踊、ヨーガ、文化など、幅広いトピックが扱われています。

作者で編者の聖仙ヴィヤーサは、人々は本聖典を読み聴きすることで駆動され、クリシュナへのバクティ(信愛)の行為をなすことで非二元論(アドヴァイタ・シャストラ)の教義を確立し、至高の主のビジョンを実現することを意図したと伝えられます。

主な語り手は聖仙シュカであり、パリクシット王子との対話形式で物語が展開されます。ただし、ナーラダとユディシュティラ王の対話が挿入される箇所があります。

「マハー・プラーナ『バーガヴァタム』は、ヴェーダに匹敵する 」と記述されています。

シュリ・スワミジは、「この世界で献身(バクティ)、智慧(ジニャーナ)、離欲(ヴァイラーギャ)を確立するために、至高の主によりこの文献に光が与えられた」と解説しています。

『バーガヴァタ・プラーナ』において頻出の「リーラー」という概念があります。神の御業、あるいは神の遊戯とも訳せます。ここでの神とは、クリシュナのことです。もし、クリシュナが必要なものすべて手に入れ、成りたいものに何でも成ることができるなら、どうして彼は俗世で活動するのでしょうか。本聖典によれば、答えは楽しみだけの目的なき遊びにあると示唆されます。クリシュナの目的は、喜びを享受し、彼を愛する人々の喜びを増すことにあります。刹那の俗世において苦しみと喜びに一喜一憂する人間にとって、リーラーはクリシュナの世界への招待状であり、扉なのです。彼のリーラーについて見聞きしたり、伝えたりすることにより、人々は彼の活動に関わることができ、時間という押し寄せる波からの解放を獲得できます。

『バーガヴァタム』では、人間は弱き存在であると伝えられます。本聖典には、人間の失敗に関するあらゆる事例について研究した上で、神の恩寵により人々が失敗に対処し、克服することができるという教訓を支持しています。

『バーガヴァタム』の「正義」を測る唯一の判断基準は、バクティ(信愛)です。人間の行為がバクティにより駆動され、クリシュナが満足する時、その果報は良きものであるはずです。