Study: バクティ (Bhakti)

バクティ (bhakti) 信愛

『ギーター』はヨーガについて教える書であるが、そのヨーガは、平等の境地であり、絶対者ブラフマンとの合一である。このヨーガを実現するために、「行為の道」(カルマ・ヨーガ karma-yoga)、「知識の道」(ジュニャーナ・ヨーガ jnana-yoga)、「信愛の道」(バクティ・ヨーガ bhakti-yoga)という三つの方法がある。行為は必ず罪悪をともなうが、社会人は行為を捨てるべきではない。行為の結果を考慮することなく、ひたすら自己に定められたヒンドゥー教徒としての義務(ダルマ)を遂行せよと教える。行為を超越するためには、最高神ブラフマンと同一)についての正しい知識、最高神に捧げる祭祀としてすべての行為を行う必要があると説く。行為の超越が完成した時、寂滅の生活を送ることにより、ブラフマンと一体化し、すべてを平等に見る。その時、人は最高の信愛を得て真実に最高神を知り、最高神と完全に一体となる。

『ギーター』においても、ウパニシャッド思想と同様の「同置」の思考法が顕著であるが、絶対者絶対者ブラフマン最高神であり、クリシュナが最高神を体現した人であるとする点が新しい。

岩波 哲学・思想事典. 1998. pp.1346r-1348l